選ばれ続ける木造アパートをつくる
「コンセプト設計」の極意
木造アパートや木造の賃貸一軒家を建築し、安定した賃貸経営を目指すオーナーにとって、避けて通れない課題が「競合物件との差別化」です。人口減少時代において、特徴のない無難なアパートはすぐに埋もれてしまいます。そこで重要になるのが、誰にどんな暮らしを提供するのかを明確にする「コンセプト設計」です。本記事では、選ばれ続ける木造賃貸をつくるためのコンセプト設計の重要性と、具体的な進め方、そして木造建築の強みを活かすポイントについて解説します。
「コンセプト設計」がアパート経営の成否を分ける理由
「立地と家賃」の勝負は価格競争に陥る
ポータルサイトで物件を探す際、多くの入居希望者は「駅徒歩○分以内」「家賃○万円以下」という条件で検索します。ここで物件に明確な特徴がない場合、最終的な決め手は「少しでも家賃が安いこと」になってしまいます。コンセプトを持たない物件は、築年数が経つにつれて新築物件に条件面で劣るようになり、結果として家賃を下げるしか入居者を獲得できない「価格競争」に陥るリスクが高まります。
「ターゲットを絞ると空室になる」の誤解
「特定の趣味やライフスタイルにターゲットを絞ると、入居希望者の母数が減って空室になるのでは?」と不安に思うオーナーは少なくありません。しかし、現代の賃貸市場では逆です。「万人受けする特徴のない部屋」よりも、「自分にぴったりの一部屋」を探している層が確実に存在します。ターゲットを絞り込むことで母数は減りますが、その層からの「絶対にここに住みたい」という強い支持(成約率)が劇的に高まるため、結果的に早期入居へと繋がります。
コンセプトが賃貸経営の好循環を生む仕組み
明確なコンセプトが刺さった入居者は、「他の物件ではこのライフスタイルが実現できない」と感じるため、相場よりやや高めの家賃でも納得して契約する傾向があります。また、自分のこだわりに合った部屋であるため満足度が高く、退去率が下がり(入居期間の長期化)、退去が出た際も独自のファン層から次の入居者が決まりやすいため空室期間が短くなるという、賃貸経営にとって理想的な好循環を生み出します。
コンセプト設計の進め方|4つのステップ
STEP1 商圏調査|競合の“空白”を探す
まずは建設予定地のエリア特性を把握します。単身者が多いのか、ファミリー層なのかといった基本情報に加え、地域の不動産仲介会社へのヒアリングを通じて「このエリアで足りていない物件(=競合の空白地帯)」を探ります。たとえば「単身向けの1Kは飽和しているが、テレワーク向けの広めの1LDKがない」といった需給のギャップを見つけることがスタートです。
STEP2 ペルソナ設定|入居者の生活を言語化する
ターゲットとなる架空の人物像(ペルソナ)を具体的に設定します。「20代後半のIT企業勤務、週3日リモートワーク、休日はアウトドア派」など、年齢や職業だけでなく、平日と休日をどのように過ごしているかまで解像度を上げて言語化します。ペルソナの生活が見えると、自ずと「どんな設備が必要か」が見えてきます。
STEP3 コンセプトを一文にまとめる
ペルソナの理想の暮らしを叶えるためのコンセプトを、わかりやすい「一文」にまとめます。例えば「愛車と共に暮らす、大人の秘密基地」や「愛犬と気兼ねなく走れる、無垢材のアパート」などです。この一文は、物件が入居者に提供する“約束”であり、後の設計や入居者募集の際のブレない判断基準となります。
STEP4 仕様への翻訳|予算を集中投下する
コンセプトが決まったら、それを具体的な建築仕様へと落とし込みます。建築予算には上限があるため、メリハリが重要です。たとえば、料理好きをターゲットにするなら「居室を少し狭くしてでも、大型のシステムキッチンを導入する」といった判断を下します。万人受けする標準設備を並べるのではなく、コンセプト実現のために予算を「集中投下」することが成功の鍵です。
【事例】コンセプト型賃貸のバリエーションと設備
趣味特化型|ガレージ・DIY・書斎
趣味を全力で楽しみたい層に向けたコンセプトです。バイクや車の手入れができる「ガレージ付き(土間スペース)」、入居者が壁紙や棚を自由にカスタマイズできる「DIY可物件」、読書やコレクションに没頭できる「造作本棚のある書斎付き」などが挙げられます。入居者のこだわりに応えるため、電源の位置や収納の柔軟性が求められます。
唯一無二型|ペット共生・楽器演奏可
単なる「ペット可」ではなく、キャットウォークや足洗い場を設けた「ペット共生型」や、二重サッシ・防音材を完備した「楽器演奏可」は、常に供給不足で根強い需要があります。このタイプは「ここ以外に選択肢がない」状態を作り出しやすいため、家賃下落が起きにくく、長期入居が見込める非常に強いコンセプトです。
働き方対応型|在宅・共用ワークスペース
リモートワークの定着により需要が定着しているのがこの型です。単なるインターネット無料だけでなく、WEB会議用の背景になるアクセントクロス、造り付けのワークデスク、通信速度の速い専用回線などが喜ばれます。また、少し規模の大きい木造アパートであれば、気分を変えて仕事ができる入居者専用の共用ワークスペースを設けるのも有効です。
木造・CLTとコンセプト設計の相性が良い理由
木の質感そのものがコンセプトになる
木造建築最大の武器は「木」そのものが持つデザイン性と温もりです。構造材である柱や梁をあえて隠さずに見せる「現し(あらわし)内装」や、無垢材のフローリングは、それだけで「木の温もりを感じるナチュラルな暮らし」という強力なコンセプトになります。コンクリート造にはない、リラックスできる空間価値を自然に提供できます。
音・熱の性能を設計で担保する
木造アパートでコンセプトを尖らせる際、課題となるのが「音(防音性)」と「熱(断熱性)」です。特にペット共生や楽器可、快適な在宅ワークをコンセプトにする場合、木造の弱点と思われがちなこれらの性能を現代の技術(高性能グラスウール、遮音マット、ペアガラスなど)でしっかり担保することが大前提となります。募集時にも「性能の高さ」をアピールすることが重要です。
コストと工期が生む仕様配分の自由度
鉄筋コンクリート(RC)造などと比較して、木造(や中大規模木造向けのCLT工法)は建築コストが抑えられ、工期も比較的短く済む傾向があります。建築費用で浮いた分の予算を、コンセプトを実現するための「特殊な設備」や「グレードの高い内装材」へと回すことができます。つまり、木造はメリハリの効いた仕様配分がしやすく、予算を集中させるコンセプト設計と非常に相性が良いと言えます。
コンセプト設計で失敗しないためのリスク管理
最大のリスク「需要のないコンセプト」と事前検証
コンセプト設計における最大の失敗は、オーナーの思い込みだけで「誰も求めていない尖った物件」を作ってしまうことです。これを防ぐためには、設計に入る前に必ず地元の賃貸仲介会社にヒアリングを行い、「もしこういう物件があったら、家賃○万円で客付けできそうか?」と事前検証(テストマーケティング)を行うことが不可欠です。
維持管理から出口戦略まで見据える
コンセプトに合わせて導入した設備(ガレージの電動シャッター、無垢材の床、ペット用設備など)は、一般的なアパートよりも維持管理費や退去時の原状回復費用が高くなる可能性があります。事業計画を立てる際は、これらのランニングコストをあらかじめ見込んでおくことが大切です。また、将来的に物件を売却する際の「出口戦略」においても、そのコンセプトが投資家に評価されるかを考慮しておきましょう。
募集・運用へ一貫して引き継ぐ
どれだけ素晴らしいコンセプトの木造アパートを建てても、それが仲介会社や入居希望者に伝わらなければ意味がありません。物件名、募集図面(マイソク)のキャッチコピー、ポータルサイトに掲載する写真の撮り方(家具を置いたホームステージングなど)に至るまで、決めたコンセプトを一貫して表現し続ける「募集・運用の引き継ぎ」があってこそ、初めてコンセプト型アパート経営は成功と言えます。
(株式会社アールシーコア)

BESSは、長年培ってきた“ほかにはない”技術とデザインで、木のクセや個性をそのまま活かし、暮らしを“遊ぶ”ための圧倒的な個性ある空間を創出します。ログハウスなどの木造建築に加え、アプローチやデッキといったランドスケープまで一体で設計し、建物単体にとどまらない世界観を実現しています。
当メディアは、Zenken株式会社が、「木のある暮らし」を提案し続けてきた株式会社アールシーコア(BESS)協力のもと制作しています。空間設計から始まる価値づくりを、木の建築という選択肢から紐解いていきます。
