木造施設の性能
木造でも耐震・耐火基準を
満たせる
かつて木造建築は、一般住宅や中小規模の施設で採用される工法でした。高層施設や大規模施設は鉄骨造や鉄筋コンクリート造が当たり前。木造でビルなんて考えられない、という人が多いのではないでしょうか。
しかし近年は、木造高層ビルが続々と建築されています。木造でも耐震・耐火基準を満たせる技術が登場し、公共施設などで採用されています。
CLT
木造・木質化の鍵となるのが、建築用木材CLTです。CLTは、3センチほどに切り出した木の板を繊維が直交するよう交互に重ねて接着したパネルのこと。最大で3m×12m、厚さ270mmもの大きなパネルを作れる点が特徴です。
壁や床、柱、屋根としてそのまま組み立てることが可能。コンクリート並みの強度で、従来の木造建築よりも高い耐震性を実現することができます。
CLTは、1990年代に海外で普及。欧米を中心にマンションや商業施設の壁や床、構造体として使われてきました。日本では、2013年から一般利用が開始。近年はCLTを活用した建築物が増加しており、令和6年度(2024年度)には累計1300件を超える見込みです※。
準耐火構造
2019年の建築基準法改正により、それまでは 耐火建築物 でしか設計できなかった木造施設が、条件を満たせば 準耐火建築物 としても設計できるようになりました。
「耐火」「準耐火」とは、火災が発生した際の「燃えにくさ」を示す法律上の基準です。
耐火建築物
- 火災時に 1〜3時間 倒壊・延焼しないように設計された建物
- 鉄筋コンクリート造や一部の鉄骨造が該当する
準耐火建築物
- 耐火建築物ほどではないが、 30分〜1時間程度 延焼を防ぐように設計された建物
- 木造でも条件を満たせば認められる
これまでは鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)でしかこれらの基準を満たすことができないと言われていました。しかし、技術の進歩により木造でも準耐火構造の基準を満たすことが可能に。これを受けて、中〜大規模施設への木造の導入が進んでいます。
断熱・調湿性能で
快適性に優れている
高温多湿の日本で快適に過ごすためには、室内の湿度を調整することが大切です。木材には湿度を自動調整する機能があります。湿度が高いときは水分を吸収し、低いときには放出。これにより結露やカビ、ダニの発生を抑え、空間全体を快適な状態に保つことが可能です。
また、木材は断熱性能にも優れています。木材には微細な孔がたくさん空いており、そこに空気を含んでいます。このため熱が伝わりにくく、温度の影響をあまり受けません。一度空気を温める(冷やす)と、そのままの温度を持続させる効果があります。
適切なメンテナンスで
経年変化が味になる
木材は自然素材のため、「メンテナンスが大変」「時間が経つと傷んだり腐ったりする」というイメージがあるかもしれません。しかし、適切な設計と定期的なメンテナンスを行うことで、長く維持することが可能です。
確かに風雨や紫外線によって色合いは変化しますが、際立つ木目や独特の風合いを「経年美化」「歴史を刻んでいる」と捉えれば、その建物自体が地域にとっての財産となります。しかも近年は、木質建材や施工技術が進化。防腐・防蟻処理、湿気対策、構造計算などを科学的・技術的に行うことで、さらなる長寿命化が可能と言われています。
進化する性能と広がる可能性
木造建築は、かつて「小規模」「住宅向け」のイメージが強いものでした。
しかし現在では、技術の進化と法改正により、中〜大規模施設でも選ばれる時代へと変化しています。CLTや準耐火構造などの登場により、耐震性・耐火性といった不安を解消しつつ、木材本来の快適性や美しさを活かした空間づくりが可能になりました。
このメディアでは、木造施設に関する最新の知識と事例を通じて、性能・コスト・意匠のバランスをどう考えるかを、多角的にお伝えしてきました。木の空間がもたらす価値に少しでも興味を持たれた方は、ぜひこの後も、木造の魅力を深掘りしてみてください。
(株式会社アールシーコア)

BESSは、長年培ってきた“ほかにはない”技術とデザインで、木のクセや個性をそのまま活かし、暮らしを“遊ぶ”ための圧倒的な個性ある空間を創出します。ログハウスなどの木造建築に加え、アプローチやデッキといったランドスケープまで一体で設計し、建物単体にとどまらない世界観を実現しています。
当メディアは、Zenken株式会社が、「木のある暮らし」を提案し続けてきた株式会社アールシーコア(BESS)協力のもと制作しています。空間設計から始まる価値づくりを、木の建築という選択肢から紐解いていきます。