木造施設のメリット・デメリット
木造施設のメリット
宿泊施設や商業施設、介護・児童福祉施設、事務所など、さまざまな施設で木造化・木質化が進んでいます。木造化とは、建物の骨組みなど構造部分に木材を使うことで、木質化とは、壁や床などの外装・内装部分に木材を使うという意味です。
木造施設は、コストや環境、利用者の精神・身体などに良い影響をもたらします。主なメリットは、以下の3つです。
- デザインの自由度が高い
- 自然素材で快適な空間を創出できる
- 利用者の印象に残りやすい
デザインの自由度が高い
木造建築は、柱と梁を中心としたシンプルな構造です。木材は鉄やコンクリートに比べて柔らかいため、曲線などの加工も簡単。骨組みと筋交の構造さえ注意すれば、比較的自由に空間をデザインすることができます。
壁で建物を支える構造ではないので、大きな窓や開口部も作ることが可能。光が降り注ぎ、周囲の景色を取り込む大きな窓など、開放的な空間を実現しやすくなります。複雑な土地の形状に合わせやすい点も魅力です。狭小地や変形敷地でも、柱と梁を組み合わせることで柔軟に対応することが可能です。
間取りを変更しやすい
建築後に壁を取り外して、間取りを自由に変更することもできます。新築時や改装時にどんなに考えても、将来その通りになるとは限りません。木造建築なら、人数の増減や顧客ニーズの変化、業態変更などさまざまなタイミングで空間をアレンジすることができます。
自然素材の快適性
木造建築では、木材の特性を活かし、温もりのある心地よい空間を実現することができます。木材の主な特性は、以下のとおりです。
優しい雰囲気にできる
自然な木目模様と明るく柔らかい色合いは、柔らかい印象を与えます。コンクリートや金属のような圧迫感が少ないのも特徴です。
光の反射でもメリットがあります。近年は強烈な暑さや日差しの日が多いですが、木材の表面には細かい凸凹があり、光を乱反射させることが可能。眩しさを軽減し、目に優しい光を作り出します。紫外線を吸収する働きもあるので、目に有害な紫外線の影響を軽減することが可能です。
調湿効果がある
高温多湿の日本で快適に過ごすためには、室内の湿度を一定に保つことが大切です。木材には湿度を自動調整する機能があります。湿度が高いときは水分を吸収し、低いときには放出。これにより結露やカビ、ダニの発生を抑え、空間全体を快適な状態に保つことが可能です。
リラックス効果がある
木材の香りには、フィトンチッドと呼ばれる物質が含まれています。フィトンチッドとは、樹木や草などが害虫や微生物などの外敵から身を守るために放出する物質のこと。
印象に残る空間
木造建築は、視覚だけでなく、触覚、嗅覚、聴覚といった多様な感覚に働きかけ、強い印象を残します。使用した木材の産地、加工した職人、デザイン設計の背景などをアピールすることで、建物そのものにストーリー性を持たせることが可能。「地元の木を使った」「地元の職人の手によって作られた」「地域貢献を目的にした」といったストーリーが共感を呼び、空間の価値をより一層高めることができます。
木造施設のデメリット
一方で、木造施設には事前に知っておきたい注意点もあります。ここでは2点ご紹介します。
耐火性が低いと言われている
木材は可燃性素材のため、火事になった際に鉄筋コンクリート造や鉄骨造より延焼リスクが高いと言われています。しかし、木材は表面こそ燃えますが、そこから中心へ燃え進む速度が非常に遅く、内部まで燃えるには相当な時間がかかります。
住宅に使う建材は大きく太いため、細い枝を燃やしたときのようにすぐに燃え尽きません。むしろ鉄筋コンクリート造や鉄骨造の方が熱で強度を失い、曲がったり折れたりしてしまいます。最近は不燃木材の性能も向上しており、木材だからと言って耐火性が低い、危険、というようなことはありません。
防音性が低い可能性がある
木造建築は通気性が高い一方、音が隙間から漏れやすい、防音性が低いと言われています。しかし、全ての木造施設で防音性が低いわけではありません。壁や床の遮音性に配慮したり、間取りを工夫したりすることで騒音リスクを軽減することは可能。気密性の高いドアや窓・サッシを選べば、室温も一定に保ちやすくなるでしょう。
劣化リスクがある
自然素材である木材を使用するため、経年変化は避けられません。防虫対策が不十分な場合は、シロアリが発生する恐れもあります。長年太陽光や風雨にさらされることで、表面が劣化し変色したり、割れ・ヒビが生じたりするケースもあるようです。
劣化を防ぐためには、適切なメンテナンスが大切。近年は集成材や積層材など劣化しにくい木質材料が登場しているので、選択肢の一つとして覚えておきましょう。
コストが割高になる
ケースがある
木造はもともと低層・中小規模施設に適した工法です。このため大規模、あるいは多層階(3階建て以上)の建築となると高度な加工技術や高強度の木材などが必要となり、かえって建築コストが高くなる場合があります。デザインや材料などにこだわる場合はなおさらでしょう。
ただし、施設の木造木質化は国が推進しています。今後技術の発展や木造建築の普及が進むにつれて、コストが低減するかもしれません。公共性の高い施設の木造木質化については国の補助金も用意されているので、ぜひチェックしてみてください。
想いをかたちにすること
木造施設は、単なる「建物」を超えた価値を私たちに与えてくれます。自然素材ならではのぬくもりや、デザインの自由度、五感に訴える空間の力。それは、宿泊・福祉・商業・集合住宅といったさまざまなシーンで、利用者の心に深く残る“体験”を創り出します。
一方で、木造ならではの注意点や、構造的・法的な検討が必要な点もあります。だからこそ、木造施設を選ぶということは、「どんな空間をつくりたいか」「どんな価値を届けたいか」という想いを見つめ直すプロセスでもあるのです。
当メディアでは、そんな木造施設の魅力や可能性を、BESS(アールシーコア)協力のもと多角的に紹介しています。空間づくりに向き合うすべての方へ、選択肢のひとつとして木造建築の価値をお届けできれば幸いです。
(株式会社アールシーコア)

BESSは、長年培ってきた“ほかにはない”技術とデザインで、木のクセや個性をそのまま活かし、暮らしを“遊ぶ”ための圧倒的な個性ある空間を創出します。ログハウスなどの木造建築に加え、アプローチやデッキといったランドスケープまで一体で設計し、建物単体にとどまらない世界観を実現しています。
当メディアは、Zenken株式会社が、「木のある暮らし」を提案し続けてきた株式会社アールシーコア(BESS)協力のもと制作しています。空間設計から始まる価値づくりを、木の建築という選択肢から紐解いていきます。