介護施設の建築費用
2026年現在も建築費の高騰は続いており、また物価高による資材のコスト増だけでなく、2024年問題に端を発する人件費や労務費の上昇、2025年からのトランプ関税による貿易の混乱など、世界中でコスト増大に関連する問題は止まる気配がありません。
さらに2026年からはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の補助金要件において、「専用部分の床面積25㎡以上」が原則化されるなど、制度面でも大きな転換点を迎えています。
このページでは介護施設の建設費用やコスト削減対策などに関して、各種データを参考にしながら2026年の動向を検討していきます。
【2026年動向】データで見る介護施設の建築費用相場と総工費シミュレーション
経営サポートセンターリサーチグループが2025年7月22日に発表した日本国内の「福祉・医療施設の建設費(2024年度)」に関する調査データを見れば、ユニット型特別養護老人ホームや保育所・認定こども園、病院などの施設の建設費は全てにおいて調査開始から最高額を更新しており、円安の影響による物価高や法改正による人件費の高騰などを受けて2026年以降もさらなる建築費の増大に向けていることが想定されます。
- 建築費用の全国平均:約128万円/坪
- 首都圏平均:約131万円/坪
- ※2024年度調査データ
また、2025年から2026年にかけてはガソリン減税の廃止など税制改正を受けて運搬費や燃料費などのコストについて一部の減少を期待できた部分もありますが、一方でトランプ関税や円安などの影響によって世界的な輸入資材の高騰といった問題も発生しており、建築業界や介護業界に限らずあらゆる業種業界において今後もますます様々なコストの高まりに備えていかなければなりません。
※参照元:2024年度 福祉・医療施設の建設費について【PDF】 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/250722_No004.pdf
米国最高裁のトランプ関税に関する判決と新たな追加関税の影響
2026年2月20日、アメリカの最高裁判所はトランプ大統領が実施した「相互関税(通称:トランプ関税)」について、大統領の権限を逸脱しているとして「違法」であるという判決を下しました。これにより、2025年からスタートしていたトランプ大統領による世界各国への相互関税が無効化されることになりましたが、翌21日、トランプ大統領は別の法的根拠にもとづいた「追加関税」を新たに発動することを表明し、関税にまつわる各国の関係や貿易の状況は一層の混迷に突入しています。
加えて、相互関税の違法判決を受けて大規模な関税の返還請求訴訟なども始まるとされており、それに対抗するためトランプ大統領がさらなる関税策を発表する恐れも懸念されるなど、建築資材や燃料など輸入に関連した製品については2026年も価格高騰や在庫減少といったリスクに見舞われる可能性があるでしょう。
※参照元:日経ビジネス電子版|トランプ関税に違憲判決 米財政・金利、対中交渉、日本への影響を読み解く https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/022200309/
【モデルケース】ユニット型特養(50床)の総事業費シミュレーション
建築費用のイメージとして、ユニット型特養(50床)を想定した総事業費のシミュレーションを行いましたので参考にしてください。なお、本シミュレーションはあくまでも目安であり、金額に土地取得費用は含まれていません。
| 費用項目 | 面積・比率の目安 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ① 建物本体工事費 | 延床面積600坪 × 坪単価130万円 | 7億8,000万円 | 構造、建材グレードで変動 |
| ② 別途工事費 | 本体工事費の約20%~30% | 約1億5,600万円~ | 外構工事、園庭整備、空調、給排水など |
| ③ 諸経費 | 総工費の約10% | 約6,500万円~ | 設計料、各種申請費用、登記費用など |
| ④ 備品購入費 | - | 約4,000万円~ | 介護ベッド、特殊浴槽、家具、リハビリ機器など |
| 総事業費(概算) | - | 約10億4,100万円~ | 土地取得費用は含まない |
なぜ高い?介護施設の建築コストを押し上げる4つの構造的要因
①全館「完全バリアフリー」の義務
介護施設にも様々な種類がありますが、基本的な前提として介護施設の建築では「完全バリアフリー」が必須条件となり、当然ながら一般の建築物よりもトータルコストがかかります。
②「ユニットケア」に対応した複雑な間取り
現在の介護施設建築の主流として、10人程度のグループ(ユニット)ごとに個室やトイレ、浴室などを配置する「ユニットケア」が採用されています。これは利用者の満足度やQOLを高める一方、水回りの工事費など建築コストの増大につながります。
③高度で専門的な「介護用設備」の導入
介護施設では専門的な介護用設備を導入しなければならず、建物の部屋や動線などもそれらの運用や設置を前提としてプランニングすることが基本です。
④24時間365日の稼働を支える高い設備性能
高齢者や要介護者が居住して日々の生活を送る介護施設では、24時間365日体制の安全管理や建物管理が不可欠となります。そのため空調システムや換気システムはもちろん、厨房やトイレ、浴室などあらゆる場面で安心安全な暮らしを守る配慮が必要です。
2026年度(令和8年度)サ高住・介護施設の補助金・制度動向
サ高住補助金
国土交通省は「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の整備に関して補助制度の要件を大幅に見直しており、2026年度からは既存の補助要件を一部変更したり新しい要件を追加したりといったことが行われています。
補助金や助成制度は建築費を抑えて事業性を高めるために不可欠な要素であり、2026年度以降に介護施設の建設を考える際には改めてサ高住補助金の制度や変更要件などに注意しなければなりません。
変更点1:家賃限度額の算出法
変更される補助要件として、家賃限度額の算出法が挙げられます。
2026年度からは家賃限度額について以下のような計算式で算出されることが重要です。
- 家賃限度額=基準単価×住戸面積×市町村立地係数
2026年度からの家賃限度額は、基準単価に施設の住戸面積と、地方自治体ごとの「市町村立地係数」を全て乗算した結果が設定されます。なお、市町村立地係数は国土交通大臣が各自治体の地価状況を勘案して、「0.7~1.6」の範囲内で個々に設定する係数であり、介護施設の建築を検討している際は必ず対象エリアの自治体の市町村立地係数を確認するようにしてください。
※参照元:建通新聞電子版|サ高住整備の補助要件見直し 専用部分の床面積25㎡以上を条件に https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KEH4632YEZVQ6WPM38460VNG
変更点2:床面積
2026年度から新規の補助要件として、「良質なサ高住とすること」という項目が追加されます。そしてこの項目はさらに、入居者にとっての快適性や利便性につながるポイントや、入居者と地域の交流といった要素などが含まれており、例えば前者に関しては「各専用部分の床面積が25㎡以上」などの条件が追加されました。
これにより介護施設を建築して補助制度を利用する場合は、床面積の条件をクリアしなければならず、さらに建築費の増大につながる懸念があるでしょう。
※参照元:建通新聞電子版|サ高住整備の補助要件見直し 専用部分の床面積25㎡以上を条件に https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KEH4632YEZVQ6WPM38460VNG
変更点3:地域交流
「良質なサ高住とすること」に関連して、入居者と地域住民が利用可能な空間や施設を設けて、地域交流の促進に向けた活動を月に1回以上の頻度で実施しなければならないという要件も追加されました。
これにより、介護施設に地域交流用のスペースを用意しなければならず、また当然にこのスペースには床面積の条件を満たさなければなりません。
※参照元:建通新聞電子版|サ高住整備の補助要件見直し 専用部分の床面積25㎡以上を条件に https://digital.kentsu.co.jp/articles/artcl_rglr/01KEH4632YEZVQ6WPM38460VNG
変更点4:各専用部分に台所・浴室・洗面・収納スペースを設置
「良質なサ高住とすること」として、それぞれの専用部分に台所や浴室、洗面所、収納スペースといった空間を設置しなければならないこともポイントです。
これらは単に空間を用意すれば良いというだけでなく、それぞれの機能に合わせた設備や配管、システムなどを含めて設計・施工しなければならないため、トータルの建築コストだけでなく経営に伴うランニングコストの増加につながる可能性があることも重要です。
介護テクノロジー導入支援事業
以前は「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」として用意されていた補助事業が一本化され、2025年度から「介護テクノロジー導入支援事業」としてスタートしています。
介護テクノロジー導入支援事業は、介護人材の深刻な不足や介護業界の業務負担の増大といった社会的課題に対する施策として、介護サービス事業者などが介護ロボットやICT機器を導入する際に、その費用等の一部を補助する制度です。
なお、本事業の補助を申請するにあたって、自治体によってはセミナーや支援プログラムなどを用意している場合もあり、これらのセミナーやプログラムへ参加することで優先的に補助を受けられる可能性がある点も注意しておきましょう。
※参照元:大阪府|大阪府介護テクノロジー導入支援事業補助金 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/koreishisetsu/kaigo_technology/tech.html
なぜ今「木造介護施設」が選ばれるのか?
現在、鉄骨造や鉄筋コンクリート造でなく、あえて「木造」による施設建築を目指す人も増えています。
ここでは、2026年の今だからこそ「木造介護施設」が選ばれるようになった理由や時代背景を解説しますので参考にしてください。
初期コスト(イニシャルコスト)の圧倒的差
木造介護施設のメリットとして、建築や事業開始にかかるイニシャルコストを抑えやすいという点が挙げられます。福祉施設の建築コストに関連した全国調査の結果やサ高住の補助要件の変更、世界的な社会情勢の混迷など、福祉業界や介護業界を取り巻く課題は山積しており、今後も物価高騰によるコスト増大が懸念される現状、少しでもイニシャルコストを抑えて事業の安定性を高める戦略は経営者として重要です。
木造建築では地盤改良費などでコストを抑えやすく、施工費についても他の工法より負担を調整しやすいことが強みです。
減価償却とキャッシュフロー(税務メリット)
例えば、鉄筋コンクリート造と木造では施設の減価償却に関わる法定耐用年数にも大きな違いがあり、木造であれば短期間で全ての建築費を経費にすることが可能となります。
これにより節税対策を行ったり、納税額を調整することでキャッシュフローの健全化を目指したりできることもメリットです。
採用・集客への影響(ウッド・ベネフィット)
木造の建築物は建物や素材そのもののメリットが多いことも見逃せません。
例えば木の床には適度な弾力があり、その上で過ごす人の負担や転倒リスクを軽減することに役立ちます。また、断熱性に優れているため冬場の底冷えを抑制したり、天然素材の香りが森林浴のようなリラックス効果を入居者に与えてくれたりといったメリットを得られることも魅力です。
コストを賢く抑え、利用者のQOLを高める5つの建築戦略
①「木造施設」という選択肢
鉄筋コンクリート造や鉄骨造は耐震性や耐久性に優れる反面、建築コストが高くなります。そのためあえて木造建築を採用し、建築コストを抑制しながら「木の温もりに触れられる施設」といったプロモーションを考えましょう。
②ライフサイクルコスト(LCC)の視点
24時間体制で空調設備や給湯設備などが稼働する介護施設では、必然的に光熱費がランニングコストの大部分を占めます。そのため設計段階から断熱性や気密性なども考慮し、長期的な視点でコスト削減を意識することも大切です。
③効率的なゾーニングと動線計画
ユニットケアを採用する場合、あらかじめユニットの配置や職員の動線を効率化しておくことで、デッドスペースを減らして建設コストの適正化を進められると共に、利用者や入居者のQOL向上も望めます。
④最新のICT・見守りシステムの活用
夜間の人件費節約や緊急時の対策として、最新式のICTや見守りシステムを採用し、リスクマネジメントとコストパフォーマンス向上を同時に追求することも肝要です。
⑤介護施設建築の経験豊富なパートナー選び
地域医療介護総合確保基金の他にも介護施設の建築や運営に関して活用できる補助金や助成金は存在しており、介護施設の建築ノウハウはもちろん、実際に各種制度を活用した経験のある設計事務所や建築会社といった専門家へ相談することが重要です。
(株式会社アールシーコア)

BESSは、長年培ってきた“ほかにはない”技術とデザインで、木のクセや個性をそのまま活かし、暮らしを“遊ぶ”ための圧倒的な個性ある空間を創出します。ログハウスなどの木造建築に加え、アプローチやデッキといったランドスケープまで一体で設計し、建物単体にとどまらない世界観を実現しています。
当メディアは、Zenken株式会社が、「木のある暮らし」を提案し続けてきた株式会社アールシーコア(BESS)協力のもと制作しています。空間設計から始まる価値づくりを、木の建築という選択肢から紐解いていきます。
