保育園などの大型木造福祉施設

~やさしさが宿る場所へ~
木造保育施設の建築事例
保育園や子育て支援施設、高齢者施設など、福祉の現場に求められるのは「機能性」だけではありません。人と人がやさしくつながり、安心して過ごせる空間づくりが何より大切です。BESS(アールシーコア)が手がける木造施設は、自然のぬくもりと心地よさを兼ね備え、利用者にも職員にもやさしい「居場所」としての力を持っています。本ページでは、実際の保育施設の事例から、その魅力をご紹介します。
上滝こどものもり
- 所在地:富山県富山市上滝499
木のぬくもりと四季のリズムが
こどもたちの感性を育む
富山市の立山連峰の麓に位置する「幼保連携型認定こども園 上滝保育園」は、生後約2か月から5歳児までを対象とした保育園です。自然環境に恵まれ、園庭も備え、四季の中で感性を磨く体験を重視しています。英語や茶道、体操など多彩な体験活動を取り入れ、子ども主体の保育を実践。園では「自分は大切にされている」と感じられる情緒豊かな環境づくりに努めています。
富山県初となるCLTログハウスによる大型木造施設として注目を集め、県主催の「木造公共建築講座」のセミナーテーマとして紹介されました。また、ログハウス協会主催のコンテストでも賞を受賞*することができました。
建物のポイントとしては、保育施設であることから外観の可愛らしさや親近感を大切にしつつ、安全で心地よい空間を実現した点です。子育てスペースには、床・壁・天井に至るまで本物の木をふんだんに使用しています。
地域の方々が集う場としても活躍する、天窓から陽が降り注ぐ大きな吹抜けホールも特長の一つです。こうした工夫により、他にはない特別な保育施設として地域のランドマークとなり、皆様から長く愛される存在になることを願っています。
木造保育施設
「上滝保育園(こどものもり)」
園長インタビュー

子どもたちの感性を育む空間は、どんな「かたち」であるべきか富山県の木造保育施設「上滝保育園(こどものもり)」は、その問いに真摯に向き合って生まれた複合施設です。RC造から木造への方向転換、地域とのつながりを育む設計、そして木の力が生む空気感。そのすべてに込められた園長・杉森さんの思いをうかがいました。
地域とつながる“こどものもり”
温もりをまとう
木造複合施設が生まれた理由
当初はRC造で計画、
しかし設計の壁に直面
――施設建設にあたって、最初から木造を検討されていたのですか?
杉森:いえ、最初はRC造で他の設計事務所にお願いしていました。ただ、図面が思ったような形ではなく、予算との乖離も大きくて断念したんです。
――社会福祉法人ならではの制約もあったと伺いました。
杉森:はい。「社会福祉充実残額」を計画的に正しく活用しなくてはならないという課題がありました。その中で納得できる設計が出てこなかったんです。それで方向転換して、木造にしようと決めました。
BESSとの出会いと、
“ドンピシャ”の提案
――アールシーコア(BESS)を選ばれた理由は?
杉森:きっかけはテレビ番組で取り上げられていたことですね。実際に展示場に行って、「ここだ」と直感しました。
――設計提案についてはいかがでしたか?
杉森:初回のヒアリングでこちらの想いや地域に必要な機能を伝えたら、まさにドンピシャの設計を描いてくださいました。複合施設という複雑な要件にも関わらず、予算内で納めてくれたのは本当にありがたかったです。
“銭湯のような交流空間”を実現
――建物の特徴やこだわりポイントを教えてください。
杉森:真ん中に大きな共有スペースがあり、その周りを保育園、子育て支援センター、そして地域交流のお風呂スペースで囲んでいます。昔この地域にあった銭湯のように、地域の人々が自然に集まって触れ合える空間を目指しました。
“こどものもり”
という世界観と木造の魅力
――“こどものもり”というネーミングには、どんな意味が込められているのでしょうか?
杉森:木造だからこそ実現できた世界観ですね。施設に入った瞬間「わあ、木のいい香り」と声が上がるほど、自然の温もりが感じられます。保育園に“森”のような存在感を持たせたかったんです。
地域・職員・親子…
すべてが変わる空気感
――利用者や職員の方々の反応はいかがですか?
杉森:職員の表情や言葉遣いも柔らかくなって、施設全体が“やさしい空気”に包まれているように感じます。科学的なデータはありませんが、確かに“森林セラピー”的なものがあると思います。
思いを“形にしてくれた”
ことへの感謝
――今後、同様の施設建設を考える方に伝えたいことはありますか?
杉森:2つあります。1つは、会計士さんに「この予算でこんなに素敵な施設ができたのか」と言われたこと。もう1つは、BESSさんが私たちの“思い”をしっかり汲み取り形にしてくれたこと。同じものはきっともう作れない。だからこそ価値があると思っています。
木造福祉施設という選択
木造施設は、ただ建物が木でできているというだけではありません。利用者の感性や情緒に寄り添い、職員の表情や言葉まで柔らかくする、そんな“空気”を生み出す力があります。
上滝保育園〈こどものもり〉が実現したのは、保育・子育て支援・地域交流をひとつに包み込む、まるで森のような複合施設。その設計には、BESSの「思いをかたちにする」提案力と、木の本質を知る技術力が活かされていました。 人と地域に寄り添い、記憶に残る場をつくる。木造だからこそ可能な福祉施設のあり方を、BESSはこれからも提案し続けます。
木造保育・介護施設の3つの強み
木造の介護・児童福祉施設は環境だけでなく、人体にも良い影響を与えるとされています。ここでは、RC造にはない木造施設の3つの強みをご紹介します。
利用者に“落ち着き”や
“安心”を与える心理効果

木造建築には、木材ならではの暖かみがあります。心地よい手触りや独特の香り、木材を通して伝わる音の響きや光などによって、利用者に癒しや安らぎをもたらします。
例えば、視覚的な安心感。コンクリートの無機質な空間よりも、自然な色合いの木材の方が「温かみ」や「親しみやすさ」を感じます。手触りは適度に柔らかく温か。香りにも、フィトンチッドという成分が含まれ、リラックス効果があります。
介護施設は、体に不調を抱えている人や高齢者が多く利用します。また幼稚園や保育園では、小さな子どもたちが親元を離れ多くの時間を過ごします。木造の施設なら、木がもたらすさまざまな効果によって、落ち着いて過ごすことが可能です。
家族や地域住民から
「信頼される」空間としての演出

温もりや安心感を感じるのは、施設の周辺で過ごす地域住民や、利用者の家族も同じです。木材特有の木目や温かい色合いが柔らかい印象を与えます。また、木材には湿度を自然に調整する調湿作用があり、室内の空気を快適に保ち、カビやダニの発生を抑制する効果が期待できます。鉄骨やコンクリートと比べて、化学物質の使用を抑えられるため、アレルギーや化学物質過敏症を持つ利用者も安心でしょう。
こうした木材を選んで建築する会社は、地域住民の目には「健康・安全に配慮できる施設」「温かい雰囲気の施設」「環境に配慮した施設」とうつります。施設への信頼感が醸成されれば、長く良好な関係を築くことが可能です。
スタッフのストレス軽減、
職場環境改善にもつながる

木の温もりや香り、柔らかさは、施設内で働くスタッフにも良い影響を与えます。まずはリラックス効果。木の香りに含まれるフィトンチッドには、リラックス効果やストレスを軽減する効果があると言われています。このため無機質な空間で働くより、肉体的にも精神的にも疲労も和らげることができます。
木材の断熱性や調湿性は、スタッフの身体的な負担を減らし、業務の質を高めるのに役立ちます。音を吸収する特性もあるため、特に子どもたちの声が賑やかな保育園や幼稚園などでは、騒音ストレスを和らげることができるでしょう。コミュニケーションを円滑に行う上でも非常に重要です。
保育園・介護福祉施設の建築費用相場
保育所や認定こども園の建築費用相場
保育所や認定こども園の建設費(坪単価)は、全国・首都圏ともに年々上昇しています。2024年度は全国平均で約156万円/坪、首都圏では約174万円/坪です。
介護施設(ユニット型特別養護老人ホーム)の建築費用相場
ユニット型特別養護老人ホームの建設費(坪単価)は、2024年度は全国平均で約128万円/坪、首都圏では約131万円/坪となっています。
ただし、木造施設を選ぶ場合は鉄骨造やRC造に比べて坪単価を抑えられる傾向があり、コスト面でのメリットが期待できます。
介護・児童福祉施設建設に
関する補助金
介護・児童福祉施設建設に関する補助金は、施設の種類や整備内容によってさまざまな種類があります。ここでは、3つの補助金をご紹介します。
次世代育成支援対策施設整備交付金
木材加工流通施設の整備、路網の整備、高性能林業機械の導入、搬出間伐、木造公共建築物の整備などを支援するため、林野庁が創設した交付金制度です。地域材を使用した公共建築物の⽊造化、内装⽊質化などにも整備費が交付されます。
対象となる施設は、保育園及び⼦育て⽀援施設、学校附属施設、図書館、児童館、病院・診療所、⾼齢者福祉施設、障害者⽀援施設など。300㎡以上の施設限定なので注意してください。補助率は、構造部の木造化については建築費の 15%以内、床・壁などを木質化する場合は内装費の 50%以内(建築費の37.5%以内)です。
社会福祉施設等施設整備費補助金
高齢者介護施設や、児童福祉施設などを新築・増築・改築する際に利用できる補助金です。補助対象となるのは建築資金や設備・備品の整備資金です。土地の取得費用や、食品の宿舎費用などは対象外となる例が多いようです。
補助割合は、原則国が1/2、都道府県が1/4です。これにより、事業者は自己負担1/4で施設を建築・改築することが可能です。
児童福祉施設の場合
保育所、乳児院、児童養護施設などの児童福祉施設を対象とした交付金です。施設を新築・改築・増築する際、あるいは耐震化や防犯・消防設備の整備をする際に利用することができます。
補助割合は、原則国が1/2、都道府県が1/4です。ただし、自治体によって補助率が微調整される場合があるので要注意です。
建築の際に注意するポイント
木造の介護・児童福祉施設を建築する際は、利用者が安心して過ごせるよう、建築基準法やバリアフリー法、都道府県の条例などを遵守しなくてはなりません。
建築基準法や消防法
木造の施設は、準耐火構造や耐火構造にするのが基本です。防火シャッターや防火扉、消防設備の設置、避難経路の確保なども必ず行いましょう。また、施設の管理者には、具体的な避難計画の策定が義務付けられています。定期的な避難訓練も行わなくてはなりません。
バリアフリー法
高齢者施設や障害者支援施設では特に、施設内での段差をなくし、転倒リスクを抑えることが大切です。スロープや手すり、エレベーターの設置、通路幅やトイレ・浴室の広さなどについても細かく規定されているので、よく確認してみてください。
学校教育法
幼稚園を設置する際は、学校教育法の「幼稚園設置基準」を満たさなくてはなりません。幼稚園に必要な設備(保育室、遊戯室、職員室、保健室、便所、飲料水用設備、手洗用設備など)、必要な面積、職員の人数などが規定されているので、よく確認してみてください。また保育所については、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たす必要があります。
木造だからこそ叶う、福祉施設のかたち
木の香り、ぬくもり、やさしい空気感、木造の福祉施設には、人の心に寄り添う力があります。
利用者が安心し、職員も自然と笑顔になれる空間。地域とゆるやかにつながる“居場所”としての価値が、そこにはあります。
BESSの木造施設は、こうした“やさしさ”をかたちにすることができる建築です。保育・子育て・介護など、福祉の現場で大切にしたい思いを、建物として丁寧に実現していく。だからこそ、他にはない存在感とあたたかさをまとっています。
人に、地域に、未来にやさしい福祉施設をつくりたい方へ、まずはBESSに相談してみませんか?
当メディアでは、木造施設の魅力や可能性を、BESS(アールシーコア)監修のもと多角的に紹介しています。空間づくりに向き合うすべての方へ、選択肢のひとつとして木造建築の価値をお届けできれば幸いです。
(株式会社アールシーコア)

BESSは、長年培ってきた“ほかにはない”技術とデザインで、木のクセや個性をそのまま活かし、暮らしを“遊ぶ”ための圧倒的な個性ある空間を創出します。ログハウスなどの木造建築に加え、アプローチやデッキといったランドスケープまで一体で設計し、建物単体にとどまらない世界観を実現しています。
当メディアは、Zenken株式会社が、「木のある暮らし」を提案し続けてきた株式会社アールシーコア(BESS)協力のもと制作しています。空間設計から始まる価値づくりを、木の建築という選択肢から紐解いていきます。